Monday, 5 November 2012

冬のはじまり


朝の窓に広がる、東雲(しののめ)の空。
サマータイムが終わって2日目の今日は、月曜日です。

9月になってからというもの、真っ暗闇の中で起きて支度をして、外灯の明かりを頼りにバス停に向かっていました。でも今日からしばらくは、陽の光が私の行く手を照らします。

サマータイムのために1時間だけ早めた時計の針を、元に戻します。そうすることで、真っ暗だった朝6:00が、日の出を迎えた"7:00"(時計の針は6:00を差しています)になるのです。
居間の窓や玄関のガラス戸から差し込む太陽の光が、こんなに気持ちの良いものだとは知りませんでした。

外の気温は-3度だというのに、陽が出ているというだけで、足取りも軽く感じられます。白い月がまだ60度の高さにあることだって、家々の前庭に生えている芝に付いた無数の白い霜だって、ちゃんと見えるんですから。

ダウンタウンと郊外を結ぶバスの乗り換えターミナルでは、「乗客感謝祭」が催されていました。早朝の構内に軽快な音楽が流れ、コーヒーなどの温かい飲み物やマフィンなどが配られていました。

いつもと同じ時間に、同じ場所にいるのに、ただ明るいというだけでみんなの気持ちが踊っています。

でも、このウキウキ気分は、帰宅時間にはすっかりしぼんでしまいました。これまではまだ明るかった空は、真っ黒に。店先の看板を照らす電灯が、ぎらぎらと目に刺さります。雪だってはらはら舞っています。気温は朝よりも暖かいのに、外の暗さが気持ちを暗くさせ、寂しく寒くそして悲しくさせます。

バスの乗客だって、心なしか静かです。

しばらくすると、朝も夜も真っ暗で寒くなるようです。オタワの冬がじわりじわりと近づいてきています。

あまりの暗さに気分が沈み、今日の授業をさぼって早々に帰宅したことは、誰にも内緒です。。。

サマータイムについては『カナダの夏の楽しみかた』で。

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Tuesday, 30 October 2012

ハローウィンがやってくる


アメリカ東部を襲ったハリケーン・サンディの影響を受けて、カナダ東部のオタワも、今日は強風でした。オタワは、ニューヨークから車で8時間ほどのところに位置しています。

風にバサバサ揺れるのは、紅葉も終わった落ち葉だけではありません。

明日に迫ったハローウィンに備えた家々のデコレーションが、それぞれの玄関口で、命を得た新しい生き物のように激しく踊っています。

10月31日はハローウィン。

調べてみると、本来は宗教的な意味を持つイベントのようですが、今日では仮装をしてお菓子を得る日に変わっています。

お菓子が大好きで、イベントごとが大好きなカナダ人たち。
子どもだけではなく、青年も、アダルトも、シニアも、みんなとっても楽しみにしています。クリスマスの次に、人気のあるイベントなのだとか。国民の休日でないことが不思議なくらい。

楽しみは、まず、家の玄関を飾ることから始まります。
立ち入り禁止のテープをドアに十字に貼付けたり、綿で空き家のホコリっぽさを表現したり、前庭にお墓を作ったり、魔除けのかかしを配置したり。もちろんカボチャも忘れません。

このデコレーション、実はお菓子を目当てにやってくる子どもたちへの「招待状」でもあるんです。では、お菓子を配りたくない人はどうするかと言うと、玄関は飾り付けせず、家の明かりを消して暗闇の中でじっと過ごすのだそう。子どもたちは17:00くらいから家々を訪問しはじめます。辺りが真っ暗になる19:00になると、中学生おばけたちが徘徊します。その間、じっと息をひそめて留守を装うのです。

そして次の楽しみは、お菓子選び。
甘いものが大好きなカナダ人たちの、得意な分野です。ひとつずつ小分けされた飴やチョコレートバー、グミやガムなどが、町に溢れ出します。子どもの安全のため、果物や手作りのお菓子など、生の食品はハローウィンでは配れません。

そしてもちろん、衣装選びです。
本当は、相手に恐怖を与える装いをするのだけれど、少々『きんちゃんの仮装大賞』のような人たちもいたり。

キャンディーを、カボチャ型のバケツに入れて、家主の家も準備完了です。さて、どんなお化けがやってくるかな?

私はと言えば、大きなカボチャで家主が作る、パンプキンチーズケーキが待ち遠しいのだけれど。あのカボチャ、食べられるんですって。

お菓子だって、怖さたっぷり

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Sunday, 28 October 2012

映画の中のカナダ


2012年10月22日。俳優のラッセル・ミーンズ氏の死亡が報じられました。

名前を聞いてもピンと来ないかたが多いと思いますが、映画『ラスト・オブ・モヒカン』でモヒカン族の酋長役を務めた男性と言うと、分かりやすいかもしれません。

このニュースを聞いた家主が、ひさしぶりに『ラスト・オブ・モヒカン』が見たくなったというので、一緒に鑑賞することにしました。

「この映画は、カナダの自然をとても美しく描いているのよ。」
と家主。何度か見たことがある映画だったのに、舞台はアメリカだと思っていました。

さて、どんな話しだったかな?

映画が始まって数分したころ、登場人物のイギリス兵がモヒカン族の村でスピーチをするシーンがありました。

「オタワのアベナキ族はフランス軍につき、我らイギリス軍に戦いを挑んでくる。」

あら、アベナキ族って言ったよね?

私の家主は、北米の先住民族のひとつであるアベナキ族の二世なんです。「オタワ」と「アベナキ族」という言葉を聞いて親しみが湧き、ストーリーにグッと引込まれてしまいました。

時代は1757年、北米の領地を巡って、フランス軍とイギリス軍が戦争をしたころ。

このころは、アメリカもカナダもまだ誕生してません。ざっくりと言えば、現在のアメリカあたりにイギリス人が、カナダのケベック州あたりにフランス人が暮らしていました。それぞれが領地拡大を狙って、戦争をすることになりました。周囲に住んでいた先住民族も、どちらかの軍について戦います。

映画が半分ほど進んだあたりで、フランス軍とイギリス軍が取引をします。フランス軍に降伏したイギリス軍が戦地・フォート ヘンリー(カナダのオンタリオ州キングストン市)を出る間、フランス軍は攻撃をしない、と。

その取引のシーンに映し出された旗に、また驚きました。フランス軍の旗には、現在のケベック州の州旗にもあるユリの花が描かれていました。フランス国旗でも、ケベックの州旗でもない、この旗。

「ニューフランスの旗かしら?」
ニューフランスと言うのは、フランス人が現在のカナダのケベック州とオンタリオ州あたりに作った領地の名前です。

そして物語は、愛の物語に変わっていきます。

イギリス軍を率いる将軍とその娘たち、そして兵士たちが旅の途中に襲われ、娘たちが捕虜となり、フランス軍についた別の部族の村に連れていかれます。モヒカン族の兄弟とその父親(ラッセル・ミーンズ氏)が、彼女たちを助けに部族の村に乗り込みます。ここで部族の酋長に向かって、モヒカン族の兄が語りかけるのですが、英語を話す兄の言葉を、英語を理解しない酋長のためにフランス語に訳す声が聞こえます。

アベナキ族の二世である家主の母語は、フランス語です。かつてのニューフランスに居住した先住民族の中には、英語を話さない人たちも多かったのでしょう。

静寂でどこまでも平坦な森や、青々とした平野、壮大な滝。登場人物たちがカナダの自然の中を駆け巡ります。

この映画は、モヒカン族として育った白人男性とイギリス将軍の娘の恋を描いたフィクションです。しかし、カナダに暮らして間もない私にとっては、カナダの歴史を教えてくれる映画となりました。

カナダのバイリンガリズムについては、「バイリンガルの町、オタワ」で。

Friday, 12 October 2012

メープルリーフが色づくころ


オタワが気に入った理由の一つは、町に緑が溢れていること。
政府が設置した2,796.4 km2の緑地帯・グリーンベルトが、カナダの首都であるオタワの町を囲んでいるのです。

9月にもなるとすっかり肌寒くなるオタワ。
最低気温と最高気温の差は、10度以上にもなります。朝晩は0度前後、日中は15度前後の気温が毎日繰り返され、グリーンベルトの木々たちがいっせいに色づくのです。

深紅に黄金色、深緑に黄緑色、そしてオレンジ色。艶やかな色をした植物が、昇って来たばかりの太陽の光に照らされて、きらきら輝きます。町中にいるのに、まるで森の中にいるような静けささえ感じられます。異国での不便さや不安を、ほんのひと時だけ忘れさせてくれます。

早朝、グリーンベルト沿いに走るバスルートは、私のお気に入りの「旅」です。

秋もそろそろ終わりに近づき、雪がぱらつくようになりました。もう少しで、真夏のような暑さインディアンサマーが数日やってきて、そして、オタワは本格的な冬に入るようです。

グリーンベルト沿いの紅葉

オタワ市内のグリーンベルト配置図(ピンクの線が緑地帯。川の北側はケベック州です)

Sunday, 30 September 2012

カナダの生活


いつの間にか9月も末日になってしまいました。朝、家々の屋根にうっすらと霜が降りています。オタワの秋の最低気温は、3度前後です。

オタワにやって来て気づいた日本との違いは、気温の差だけではありません。気づいた違いの中からほんの少しを、紹介をしたいと思います。

まずは、家の塀。
日本の一戸建ての家には、たいてい、塀があります。外からは、中のようすをうかがうことができません。でも、オタワの家々には外壁がありません。北米は、プライバシーを大切にするのが文化の一つだと思っていたので、これは驚きです。どの家も、前庭に植えた芝をきれいに手入れし、隣の家と芝を共有しています。

そして、街全体に日陰になる場所が少ないこと。
特にバス停は、まるでサンルームです。夏の間バスを待つとき、少しでも紫外線から身を守りたいと思い日陰を探すのだけれど、どこもかしこも日光でいっぱいです。年間を通した日照時間が、日本に比べて少ないオタワでは、太陽の光は「遮るもの」ではなく、「取り入れるもの」になっているようです。

最後に、室内の床。
洋間、と言えばフローリングの部屋を差すのは日本の考えかたのようです。オタワのほとんどの家やビルは、床に絨毯が敷かれています。フローリングに比べてコストが安いことと、室内の暖かさを保つことが、絨毯を選ぶ理由のよう。

カルチャーショックはストレスの原因になるけれど、理由を知ると容易に受け入れられるものが多いように感じます。

上:外壁のない家々、左:職場の床、右:バス停

Sunday, 26 August 2012

真夏のビーチパーティー


オタワにやって来て初めての夏が、いつの間にか終わってしまったようです。

日本がお盆に入った8月11日。
オタワ市内から車で1時間半の場所にある、友人の別荘で行なわれたパーティーに行ってきました。林の中に一軒だけ建てられたこの別荘には、湖に向かってプライベートビーチがあります。

真夏のビーチパーティー。
どれだけテンション上がっていたか、想像できるでしょ?
林の中でキャンプをするためにテント、そして泳ぎまくるために水着を持参しました。2日間、飲んで、騒いで、泳いで過ごす予定でした。

到着してすぐに、水着に着替えてビーチに走りました。水に足を浸けてびっくり。氷のように冷たいのです。

それもそのはず。

8月のオタワの気温は15~25度前後。朝は、長袖のパーカーが必要なくらい寒いのです。日中に温められた水温も、夕方から翌朝にかけてすっかり冷たくなってしまうようです。それでもパーティーの参加者たちは、気持ちがいいなどと言いながら、水に浸かったり、泳いだりして楽しむのです。夏ですものね。

私はと言えば、水着を着けて、ビールを片手に、友人たちと屋外に設置された温水ジャグジーに浸かり、週末を過ごしました。「飲んで、騒いで、泳いで」が、「飲んで、しゃべって、入浴して」に変わってしまいました。これが今年の、オタワの「真夏のビーチパーティー」。

8月が最後の週を迎えます。
日没も早くなり、朝晩はすっかり冷え込むようになりました。ここは日本ではないのは分かっているけれど、どこか、灼熱の太陽と湿気を含んだ熱気の「夏」を期待していました。オタワの夏は、5月ごろからゆっくり静かにやってきて、8月には去ってしまうようです。

6月の湖のほうが、暖かかったなぁ。

Wednesday, 22 August 2012

異文化を理解するということ


私が通う職業訓練校のシステムは、日本の職業安定所に似ています。雇用保険はもらえないけれど、就職をバックアップしてくれる就職カウンセラーがいます。利用者の状況に合わせて、仕事の見つけかたや履歴書の書きかた講習、プレゼンテーション方法伝授の講座など、さまざまな授業を紹介してくれます。

カナダで社会人デビューしたばかりの私に担当カウンセラーが紹介してくれたのは、就職後の異文化理解のためのワークショップ。

仕事を初めて一か月。すでにたくさんの疑問が生まれていました。

How are you? (元気?)と聞かれたら、I'm fine, thank you, and you?(元気よ。あなたは?)と応えるのは正しいこと?毎朝、同僚みんなに聞かれるけれど、同じ応えを繰り返すの?

社長をファーストネームで呼んでいるけれど、失礼ではないの?ちゃんと敬意を表わせているのかしら?

ワークショップのトレーナーは、こんな私の質問に、うれしそうに答えをくれました。


そう。完璧よ。I'm fine, thank you, and you?と毎日、みんなに応えて。あなたの状態なんて、実は誰も気にしていないんだから。みんな形式的に聞いているだけ。仲良くなるまではね。

月曜日には、週末はどうだった?なんて聞かれるかもしれない。あ、聞かれている?そのときはなんて応えているの?良かったわ、だけでは、物足りないわよ。だってこのときが、お近づきになるチャンスだもの。釣りに行ったとか、ケベック州に初めて行ったとか、そんなことを話してみるといいわよ。そこから会話が広がって、形式だけの朝の挨拶をする関係から、友達に発展するかもしれないじゃない!

あなたは日本から来たんだったわね。気持ちは分かるわ、上司を呼び捨てにするのが居心地が悪いんでしょ?でも実はね、ファーストネームで呼ぶのは敬意を表すひとつの方法なの。○○社長、とか○○さんなんて呼んでいては、逆に失礼なのよ。北米では、相手を理解するということが、敬意を表すということなの。相手を知っているからこそ、ファーストネームで呼んで、距離を縮めるわけ。

相手を理解することと、敬意を表すことについて、ちょっとしたエピソードがあるのよ。かつて私のワークショップに参加していた女性の話しをするね。彼女がボランティアとして会社に所属をしたときのこと。社内にコーヒーメーカーはあるのに、それが使われていないのを見た彼女は、まわりの人に聞きました。コーヒーメーカーが使われていないのには、なにか理由がありますか?って。誰も淹れようとしないから、これが理由。「じゃ、私が毎朝、コーヒーを淹れますよ」。彼女はよろこんで毎朝、コーヒーを作り始めました。

その後、社内でクリスマスパーティーをすることになったんだけれど、運営委員なんてめんどくさいから誰もやりたがらなかったそう。彼女また、「クリスマスパーティーは開催したことも、参加したこともないけれど、私お手伝いしますよ」と名乗りを上げたんですって。全身の肌を覆った、目だけ見えるイスラム教徒の女性がよ。

相手に歩み寄っていくことが、相手を理解すること、そして敬意を表すことなのよ。

もちろんこの女性は、すぐに正社員として雇われることになったわ。


「異文化」などと難しい言葉にしてしまうと分かりにくいけれど、相手に歩み寄って理解しようと努めれば、どんな場所でも上手くやっていけるような気がしています。