猫の世話をするために、4日間、留守宅に泊まり込んでいます。
私の仮住まいの家主の弟と、そのパートナーが旅行に出掛けるため、猫の世話をしてくれる人を探していました。役目は餌をあげるだけ。さらに、ひとりで彼らの家を独占できるのだと聞き、まっさきに手を挙げたのが私。
私の仮住まいはオタワ市内の東にあります。そしてこの4日間の住まいは、西側に位置しています。
夜22時。
学校を終えてから、彼らの家に到着です。
まずは家の鍵を受け取り、少し傾いた玄関の戸を開けるコツを教わります。
「玄関を開けるときは、猫が飛び出さないように注意して」
そしてセキュリティーシステム。
留守中と就寝中の防犯のために、出掛ける前と寝る前にシステムを作動させます。システムが作動しているときに、一階のいずれかの窓か戸を開けた場合は、アラームが鳴ります。
「システムを設定するときは、(玄関のすぐ前にある)居間の扉は閉めておいて。猫が誤って飛び出すかもしれないから」
「朝起きたら、なによりも先にまずシステムを切って、サンルームと台所の窓を開けて。猫が行き来するから」
次に、二階を案内してくれます。
「ここがあなたの寝室。角にあるのは猫用の飲み水」
二階には4つの部屋があり、ユニットバスが2つあります。すべての部屋とトイレに猫用の飲み水が入ったボールが置かれ、これを満たすことも私の仕事です。
「トイレの蓋はいつも閉めておいて。猫がトイレの水を飲んだらいけないから」
次は地下。
「猫用トイレはここね。これは毎日、掃除して」
最後は居間と台所。
3匹の猫インキーとパディントン、スヌーズルは、それぞれ自分の餌場を持っています。
メモ用紙が差し出されました。たくさん言うから、書き留めておいて、と。
猫たちの食事は、朝晩の一日二回。
スヌーズルは痩せすぎているので、高カロリーのこの食事を出して。食が細いので、こうやって側で見ていて、励ましてあげて。それでも食べなかったら、他の「ふたり」と同じ食事を出してみて。
パディントンは肝臓を病んでいるので、この薬を猫カンの上に振りかけて。
インキーはたくさん食べるから、何度も食事を催促すると思うの。一食多くあげたからって体に毒なわけじゃないから、もう一回あげて。
猫カンは冷蔵庫にあるこれ。無くなったら、別の種類をあげてみて。味が違うからもしかしたら食べないかも。その場合は、捨てて、いつものやつをあげて。
餌場にはランチョンマットが敷かれ、その上にガラスのボールと陶器の器が置かれています。ガラスのボールは猫カン用で、陶器はドライタイプのキャットフード用。
「日によって食べたいものが違うみたい。まずは猫カンをあげてみて。食べなかったらドライタイプのキャットフードを用意してあげて」
日に何度か、「三人」が在宅しているか確認することも、忘れてはいけません。
「特に出掛ける前と帰ってきたときは、名前を呼んで確認して」
ふと気がつけば、時間はすでに深夜0時。
「言い忘れたことがあれば、明日、出発前に伝えるね。おやすみ。部屋の戸は少し開けておいてね。三人が夜、出入りするから」
シャワーを浴びて部屋に戻ると、パディントンが、開けっ放しにしたキャリーバッグに潜り込み、私の洋服の上で転がりながらその感触を楽しんでいるところでした。
「家が火事になろうと、ものが壊れようと、いっこうに構わないよ。猫たちさえ4日間、元気に過ごしていれば」
そう言い残して、翌朝ふたりは旅立って行きました。
後に残されたのは、大量のメモ書きと、読むつもりで持参した4冊の小説、自由気ままな3匹の猫たち、そして朝から大忙しの私。