Monday, 5 November 2012

冬のはじまり


朝の窓に広がる、東雲(しののめ)の空。
サマータイムが終わって2日目の今日は、月曜日です。

9月になってからというもの、真っ暗闇の中で起きて支度をして、外灯の明かりを頼りにバス停に向かっていました。でも今日からしばらくは、陽の光が私の行く手を照らします。

サマータイムのために1時間だけ早めた時計の針を、元に戻します。そうすることで、真っ暗だった朝6:00が、日の出を迎えた"7:00"(時計の針は6:00を差しています)になるのです。
居間の窓や玄関のガラス戸から差し込む太陽の光が、こんなに気持ちの良いものだとは知りませんでした。

外の気温は-3度だというのに、陽が出ているというだけで、足取りも軽く感じられます。白い月がまだ60度の高さにあることだって、家々の前庭に生えている芝に付いた無数の白い霜だって、ちゃんと見えるんですから。

ダウンタウンと郊外を結ぶバスの乗り換えターミナルでは、「乗客感謝祭」が催されていました。早朝の構内に軽快な音楽が流れ、コーヒーなどの温かい飲み物やマフィンなどが配られていました。

いつもと同じ時間に、同じ場所にいるのに、ただ明るいというだけでみんなの気持ちが踊っています。

でも、このウキウキ気分は、帰宅時間にはすっかりしぼんでしまいました。これまではまだ明るかった空は、真っ黒に。店先の看板を照らす電灯が、ぎらぎらと目に刺さります。雪だってはらはら舞っています。気温は朝よりも暖かいのに、外の暗さが気持ちを暗くさせ、寂しく寒くそして悲しくさせます。

バスの乗客だって、心なしか静かです。

しばらくすると、朝も夜も真っ暗で寒くなるようです。オタワの冬がじわりじわりと近づいてきています。

あまりの暗さに気分が沈み、今日の授業をさぼって早々に帰宅したことは、誰にも内緒です。。。

サマータイムについては『カナダの夏の楽しみかた』で。

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Tuesday, 30 October 2012

ハローウィンがやってくる


アメリカ東部を襲ったハリケーン・サンディの影響を受けて、カナダ東部のオタワも、今日は強風でした。オタワは、ニューヨークから車で8時間ほどのところに位置しています。

風にバサバサ揺れるのは、紅葉も終わった落ち葉だけではありません。

明日に迫ったハローウィンに備えた家々のデコレーションが、それぞれの玄関口で、命を得た新しい生き物のように激しく踊っています。

10月31日はハローウィン。

調べてみると、本来は宗教的な意味を持つイベントのようですが、今日では仮装をしてお菓子を得る日に変わっています。

お菓子が大好きで、イベントごとが大好きなカナダ人たち。
子どもだけではなく、青年も、アダルトも、シニアも、みんなとっても楽しみにしています。クリスマスの次に、人気のあるイベントなのだとか。国民の休日でないことが不思議なくらい。

楽しみは、まず、家の玄関を飾ることから始まります。
立ち入り禁止のテープをドアに十字に貼付けたり、綿で空き家のホコリっぽさを表現したり、前庭にお墓を作ったり、魔除けのかかしを配置したり。もちろんカボチャも忘れません。

このデコレーション、実はお菓子を目当てにやってくる子どもたちへの「招待状」でもあるんです。では、お菓子を配りたくない人はどうするかと言うと、玄関は飾り付けせず、家の明かりを消して暗闇の中でじっと過ごすのだそう。子どもたちは17:00くらいから家々を訪問しはじめます。辺りが真っ暗になる19:00になると、中学生おばけたちが徘徊します。その間、じっと息をひそめて留守を装うのです。

そして次の楽しみは、お菓子選び。
甘いものが大好きなカナダ人たちの、得意な分野です。ひとつずつ小分けされた飴やチョコレートバー、グミやガムなどが、町に溢れ出します。子どもの安全のため、果物や手作りのお菓子など、生の食品はハローウィンでは配れません。

そしてもちろん、衣装選びです。
本当は、相手に恐怖を与える装いをするのだけれど、少々『きんちゃんの仮装大賞』のような人たちもいたり。

キャンディーを、カボチャ型のバケツに入れて、家主の家も準備完了です。さて、どんなお化けがやってくるかな?

私はと言えば、大きなカボチャで家主が作る、パンプキンチーズケーキが待ち遠しいのだけれど。あのカボチャ、食べられるんですって。

お菓子だって、怖さたっぷり

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Sunday, 28 October 2012

映画の中のカナダ


2012年10月22日。俳優のラッセル・ミーンズ氏の死亡が報じられました。

名前を聞いてもピンと来ないかたが多いと思いますが、映画『ラスト・オブ・モヒカン』でモヒカン族の酋長役を務めた男性と言うと、分かりやすいかもしれません。

このニュースを聞いた家主が、ひさしぶりに『ラスト・オブ・モヒカン』が見たくなったというので、一緒に鑑賞することにしました。

「この映画は、カナダの自然をとても美しく描いているのよ。」
と家主。何度か見たことがある映画だったのに、舞台はアメリカだと思っていました。

さて、どんな話しだったかな?

映画が始まって数分したころ、登場人物のイギリス兵がモヒカン族の村でスピーチをするシーンがありました。

「オタワのアベナキ族はフランス軍につき、我らイギリス軍に戦いを挑んでくる。」

あら、アベナキ族って言ったよね?

私の家主は、北米の先住民族のひとつであるアベナキ族の二世なんです。「オタワ」と「アベナキ族」という言葉を聞いて親しみが湧き、ストーリーにグッと引込まれてしまいました。

時代は1757年、北米の領地を巡って、フランス軍とイギリス軍が戦争をしたころ。

このころは、アメリカもカナダもまだ誕生してません。ざっくりと言えば、現在のアメリカあたりにイギリス人が、カナダのケベック州あたりにフランス人が暮らしていました。それぞれが領地拡大を狙って、戦争をすることになりました。周囲に住んでいた先住民族も、どちらかの軍について戦います。

映画が半分ほど進んだあたりで、フランス軍とイギリス軍が取引をします。フランス軍に降伏したイギリス軍が戦地・フォート ヘンリー(カナダのオンタリオ州キングストン市)を出る間、フランス軍は攻撃をしない、と。

その取引のシーンに映し出された旗に、また驚きました。フランス軍の旗には、現在のケベック州の州旗にもあるユリの花が描かれていました。フランス国旗でも、ケベックの州旗でもない、この旗。

ニューフランスの旗かしら?」
ニューフランスと言うのは、フランス人が現在のカナダのケベック州とオンタリオ州あたりに作った領地の名前です。

そして物語は、愛の物語に変わっていきます。

イギリス軍を率いる将軍とその娘たち、そして兵士たちが旅の途中に襲われ、娘たちが捕虜となり、フランス軍についた別の部族の村に連れていかれます。モヒカン族の兄弟とその父親(ラッセル・ミーンズ氏)が、彼女たちを助けに部族の村に乗り込みます。ここで部族の酋長に向かって、モヒカン族の兄が語りかけるのですが、英語を話す兄の言葉を、英語を理解しない酋長のためにフランス語に訳す声が聞こえます。

アベナキ族の二世である家主の母語は、フランス語です。かつてのニューフランスに居住した先住民族の中には、英語を話さない人たちも多かったのでしょう。

静寂でどこまでも平坦な森や、青々とした平野、壮大な滝。登場人物たちがカナダの自然の中を駆け巡ります。

この映画は、モヒカン族として育った白人男性とイギリス将軍の娘の恋を描いたフィクションです。しかし、カナダに暮らして間もない私にとっては、カナダの歴史を教えてくれる映画となりました。

カナダのバイリンガリズムについては、「バイリンガルの町、オタワ」で。

Friday, 12 October 2012

メープルリーフが色づくころ


オタワが気に入った理由の一つは、町に緑が溢れていること。
政府が設置した2,796.4 km2の緑地帯・グリーンベルトが、カナダの首都であるオタワの町を囲んでいるのです。

9月にもなるとすっかり肌寒くなるオタワ。
最低気温と最高気温の差は、10度以上にもなります。朝晩は0度前後、日中は15度前後の気温が毎日繰り返され、グリーンベルトの木々たちがいっせいに色づくのです。

深紅に黄金色、深緑に黄緑色、そしてオレンジ色。艶やかな色をした植物が、昇って来たばかりの太陽の光に照らされて、きらきら輝きます。町中にいるのに、まるで森の中にいるような静けささえ感じられます。異国での不便さや不安を、ほんのひと時だけ忘れさせてくれます。

早朝、グリーンベルト沿いに走るバスルートは、私のお気に入りの「旅」です。

秋もそろそろ終わりに近づき、雪がぱらつくようになりました。もう少しで、真夏のような暑さインディアンサマーが数日やってきて、そして、オタワは本格的な冬に入るようです。

グリーンベルト沿いの紅葉

オタワ市内のグリーンベルト配置図(ピンクの線が緑地帯。川の北側はケベック州です)

Sunday, 30 September 2012

カナダの生活


いつの間にか9月も末日になってしまいました。朝、家々の屋根にうっすらと霜が降りています。オタワの秋の最低気温は、3度前後です。

オタワにやって来て気づいた日本との違いは、気温の差だけではありません。気づいた違いの中からほんの少しを、紹介をしたいと思います。

まずは、家の塀。
日本の一戸建ての家には、たいてい、塀があります。外からは、中のようすをうかがうことができません。でも、オタワの家々には外がありません。北米は、プライバシーを大切にするのが文化の一つだと思っていたので、これは驚きです。どの家も、前庭に植えた芝をきれいに手入れし、隣の家と芝を共有しています。

そして、街全体に日陰になる場所が少ないこと。
特にバス停は、まるでサンルームです。夏の間バスを待つとき、少しでも紫外線から身を守りたいと思い日陰を探すのだけれど、どこもかしこも日光でいっぱいです。年間を通した日照時間が、日本に比べて少ないオタワでは、太陽の光は「遮るもの」ではなく、「取り入れるもの」になっているようです。

最後に、室内の床。
洋間、と言えばフローリングの部屋を差すのは日本の考えかたのようです。オタワのほとんどの家やビルは、床に絨毯が敷かれています。フローリングに比べてコストが安いことと、室内の暖かさを保つことが、絨毯を選ぶ理由のよう。

カルチャーショックはストレスの原因になるけれど、理由を知ると容易に受け入れられるものが多いように感じます。

上:外壁のない家々、左:職場の床、右:バス停

Sunday, 26 August 2012

真夏のビーチパーティー


オタワにやって来て初めての夏が、いつの間にか終わってしまったようです。

日本がお盆に入った8月11日。
オタワ市内から車で1時間半の場所にある、友人の別荘で行なわれたパーティーに行ってきました。林の中に一軒だけ建てられたこの別荘には、湖に向かってプライベートビーチがあります。

真夏のビーチパーティー。
どれだけテンション上がっていたか、想像できるでしょ?
林の中でキャンプをするためにテント、そして泳ぎまくるために水着を持参しました。2日間、飲んで、騒いで、泳いで過ごす予定でした。

到着してすぐに、水着に着替えてビーチに走りました。水に足を浸けてびっくり。氷のように冷たいのです。

それもそのはず。

8月のオタワの気温は15~25度前後。朝は、長袖のパーカーが必要なくらい寒いのです。日中に温められた水温も、夕方から翌朝にかけてすっかり冷たくなってしまうようです。それでもパーティーの参加者たちは、気持ちがいいなどと言いながら、水に浸かったり、泳いだりして楽しむのです。夏ですものね。

私はと言えば、水着を着けて、ビールを片手に、友人たちと屋外に設置された温水ジャグジーに浸かり、週末を過ごしました。「飲んで、騒いで、泳いで」が、「飲んで、しゃべって、入浴して」に変わってしまいました。これが今年の、オタワの「真夏のビーチパーティー」。

8月が最後の週を迎えます。
日没も早くなり、朝晩はすっかり冷え込むようになりました。ここは日本ではないのは分かっているけれど、どこか、灼熱の太陽と湿気を含んだ熱気の「夏」を期待していました。オタワの夏は、5月ごろからゆっくり静かにやってきて、8月には去ってしまうようです。

6月の湖のほうが、暖かかったなぁ。

Wednesday, 22 August 2012

異文化を理解するということ


私が通う職業訓練校のシステムは、日本の職業安定所に似ています。雇用保険はもらえないけれど、就職をバックアップしてくれる就職カウンセラーがいます。利用者の状況に合わせて、仕事の見つけかたや履歴書の書きかた講習、プレゼンテーション方法伝授の講座など、さまざまな授業を紹介してくれます。

カナダで社会人デビューしたばかりの私に担当カウンセラーが紹介してくれたのは、就職後の異文化理解のためのワークショップ。

仕事を初めて一か月。すでにたくさんの疑問が生まれていました。

How are you? (元気?)と聞かれたら、I'm fine, thank you, and you?(元気よ。あなたは?)と応えるのは正しいこと?毎朝、同僚みんなに聞かれるけれど、同じ応えを繰り返すの?

社長をファーストネームで呼んでいるけれど、失礼ではないの?ちゃんと敬意を表わせているのかしら?

ワークショップのトレーナーは、こんな私の質問に、うれしそうに答えをくれました。


そう。完璧よ。I'm fine, thank you, and you?と毎日、みんなに応えて。あなたの状態なんて、実は誰も気にしていないんだから。みんな形式的に聞いているだけ。仲良くなるまではね。

月曜日には、週末はどうだった?なんて聞かれるかもしれない。あ、聞かれている?そのときはなんて応えているの?良かったわ、だけでは、物足りないわよ。だってこのときが、お近づきになるチャンスだもの。釣りに行ったとか、ケベック州に初めて行ったとか、そんなことを話してみるといいわよ。そこから会話が広がって、形式だけの朝の挨拶をする関係から、友達に発展するかもしれないじゃない!

あなたは日本から来たんだったわね。気持ちは分かるわ、上司を呼び捨てにするのが居心地が悪いんでしょ?でも実はね、ファーストネームで呼ぶのは敬意を表すひとつの方法なの。○○社長、とか○○さんなんて呼んでいては、逆に失礼なのよ。北米では、相手を理解するということが、敬意を表すということなの。相手を知っているからこそ、ファーストネームで呼んで、距離を縮めるわけ。

相手を理解することと、敬意を表すことについて、ちょっとしたエピソードがあるのよ。かつて私のワークショップに参加していた女性の話しをするね。彼女がボランティアとして会社に所属をしたときのこと。社内にコーヒーメーカーはあるのに、それが使われていないのを見た彼女は、まわりの人に聞きました。コーヒーメーカーが使われていないのには、なにか理由がありますか?って。誰も淹れようとしないから、これが理由。「じゃ、私が毎朝、コーヒーを淹れますよ」。彼女はよろこんで毎朝、コーヒーを作り始めました。

その後、社内でクリスマスパーティーをすることになったんだけれど、運営委員なんてめんどくさいから誰もやりたがらなかったそう。彼女また、「クリスマスパーティーは開催したことも、参加したこともないけれど、私お手伝いしますよ」と名乗りを上げたんですって。全身の肌を覆った、目だけ見えるイスラム教徒の女性がよ。

相手に歩み寄っていくことが、相手を理解すること、そして敬意を表すことなのよ。

もちろんこの女性は、すぐに正社員として雇われることになったわ。


「異文化」などと難しい言葉にしてしまうと分かりにくいけれど、相手に歩み寄って理解しようと努めれば、どんな場所でも上手くやっていけるような気がしています。

Sunday, 19 August 2012

カナダの文化と言語


日本人は、箸を使って食事をします。
日本人は、風呂に浸かったり、温泉に入ったりします。
日本人は、ものごとに正確性や完成度の高さを求めます。

では、カナダ人はどうでしょう。

カナダの文化や慣習を述べることはとても難しいんです。なぜかというと、カナダ人はみな、どこか別の国から来た移民たちだからです。

カナダでは、多くの場合、文化は個性として捕らえられます。つまり、

ききは、箸を使って食事をします。
ききは、風呂に浸かったり、温泉に入ったりします。
ききは、ものごとに正確性や完成度の高さを求めます。

となるのです。

建国から約150年のカナダには、伝統や文化が多くありません。中南米やアフリカ、アジア、中東やヨーロッパ諸国から渡ってきた移民たちが持ち込んだ自国の伝統が、カナダで「個性」という名の「文化」となって、息づいています。

単一民族の国、日本に生まれ育った私には、この、「多民族/多文化国家」がなかなか理解できません。なにか嫌なことを経験するたびに、ついつい「カナダ(人)は!」と責めたくなるのです。

望めば、私だってカナダ国籍を持つカナダ人になれるのです。「カナダ人」は、「カナダ国籍を取得した移民」という意味になるのかもしれません。

言語だって同じことです。カナダ英語はどんな音なのでしょう。

日本でTOEICの勉強をしていたころ、リスニングテストに、それまでのアメリカ英語だけではなくカナダや豪州、英国の発音が導入されると聞き、恐れさえ感じました。カナダに来るまでは、カナダの英語はアメリカの英語に似ているのだろうと思っていました。

しかし、違うんです。

スペイン語を母国語とするカナダ人の中には、yetをジェットと発音する人もいます。フレンチカナディアンの中には、英語を話すときにフランス語同様にhを発音したいため、hate(嫌いです)をate(食べました)と言う人だっています。

これもまた、個性です。

そんな多民族/多文化国家のカナダでは、一か月続いたイスラム教の断食月・ラマダンがそろそろ終わろうとしています。

Saturday, 28 July 2012

カナダの社会人と、日本の社会人


カナダと日本の就職活動の方法には、私が思っていたよりも類似点が多いことに気がつきました。

私が通う語学学校では授業の一環として、就職のための履歴書の書きかたや面接訓練があります。

就職活動は、どんな場合でも、誰にとってもストレスなもの。
まして、言葉や文化の違いを乗り越えて外国で就職をするのは、簡単なことではありません。

履歴書は書けても、面接となると萎縮してしまいます。
「あなた自身について、教えてください」と聞かれれば、自分のこれまでの経歴を簡潔に的確に言えていました。これが"Tell me about yourself."(あなた自身について、教えてください)となると、どんな応えを求められているのか分からず、考え込んでしまって声が出ないんです。

面接なくして就職先は決まりません。

面接がいよいよ恐怖になってきたころ、学校で模擬面接が行なわれました。
カナダに住んでいれば英語を話す機会は当然あります。しかし、面接を受ける機会は、書類選考を通過して、面接に呼ばれなければありません。そのため、カナダで企業の面接を受けたことがない生徒は多いのです。

本番と同じような雰囲気を味わうために、スーツに準ずる装いで参加するようにと、事前に通知を受けました。

9人の面接官役の人たちに、一対一で対面して実際の面接と同じように質問を受けます。面接官役みな、ある会社の人事部や部長クラスの人たちです。

面接官が待つ部屋のドアをノックします。「どうぞ」の声を聞いてから、ドアを開けて入ります。
面接官の前に進み出て、名前を述べて、握手のために右手を差し出します。面接のために時間を作ってくれたことへのお礼も伝えます。
勧められてから、椅子に座ります。

まずは自己紹介から。そして、質問に入ります。

面接官:上司や同僚とうまくいかなかったことはありますか?そのときの状況と、どのように解決をしたかを教えてください。
私:(こんな状況で、こんなことがありました。)私も相手も、お互いを責めたために、状況はさらに悪化しました。(そして、こんなふうに解決をしました。)

面接官:難しい顧客との接した機会はありますか?そのときの状況と、どのように解決をしたかを教えてください。
私:(こんな状況で、こんなことがありました。)賛成も異論も唱えず、相手の話しを辛抱強く聞きました。結果、客は言いたいことを言えたことに満足をして、去りました。

面接官:あなたが部長だったら、部下たちの仲間割れをどのように解決しますか。
私:え!私が部長ですか!?ちょっと待ってくださいね。考える時間を下さい。うーん、うーん。たぶん、部下にひとりずつ会い、話しを聞きます。みなそれぞれに言い分があると思いますから。その後、全体ミーティングを開いて、みんなで問題を解決すると思います。

面接官が、面接終了を伝え、いつごろ採用の結果が出るかを教えてくれます。立ち上がって握手を求め、面接に呼んでくれたことに再び感謝を述べて、良い結果が出ることを待っていると伝えます。

模擬面接が終わり、その場で各面接官から評価を受けます。
<良かった点>
姿勢とマナーが社会人らしいこと。適所に笑顔があり、親しみが持てること。社内で争いが起きたときに、相手だけを責めるのではなく、自分も争いの中にいるという自覚を持っていること。難しい顧客を相手にしたときに、相手をさらに怒らせることなく、問題を解決する能力があると、面接官に伝えられたこと。責任ある仕事を任されたときに、チームワークを尊重していく力があると、面接官に伝えられたこと。

<悪かった点>
握手をするときは、強く相手の手を握ること。大きな声ではきはきと話しをすること。

生徒の中には、ヒールの高すぎる靴や赤いマニュキュア、耳にぶら下がるピアス、匂いの強い香水は面接にふさわしくないと注意を受けた人もいました。

ほら、なんだか日本の企業の面接を受けているみたいでしょう?

間違った英語の言い回しや単語を使うことを自覚しているために、声も小さくなりがちです。握手など慣れていないので、力加減が分かりません。

それでも、日本で知らず知らずのうちに身につけた社会人としてのマナーや、問題解決のテクニック。カナダの社内人としての常識に、ぴったりと当てはまるようです。

あんなに苦痛だった面接ですが、今では、社会人として堂々と挑む自信がつきました。

模擬面接を受けるように、リラックスして面接に望むことが、成功の鍵のようです。

正しい握手のしかたについては、職業訓練校〜ビジネスマナー編で!

Sunday, 15 July 2012

インラインスケートをはじめました。


家の近所を歩いていると、インラインスケートで走り抜ける若者を見かけます。風を切ってさっそうと滑っていく姿は、なんとも壮快で美しいのです。

「インラインスケートは楽しそうね。機会があればやってみたいわ」

などと話す私。家主は行ったん姿を消し、戻って来たその手には新品のインラインスケートが握られていました。インラインスケートを始めようと買ったのだけれど、7年経った今でも使ったことはないのだとか。

やってみたいわ、と言ったものの、さて、滑れるかしら。

ようやく陽が落ちた22時。
初滑りの無様な姿は人には見せられないので、人がいないことを確かめて、挑戦してみることにしました。

7年間眠っていた新品インラインスケート。
足を入れてみると、心地よいフィット感があります。紐をしっかりと締めて、足首のベルトも締め上げます。膝と掌に保護具を着けます。ヘルメットは、転んだときに脱げないように、顎紐をキュッと締めます。

そろりと立ち上がってみると、あら、ローラーがアスファルトに吸い付くような安定感があります。
ゆっくりと右足を前に出します。次は左足。

気がついたら、滑れていました。

住宅街を抜けて、小学校の校庭(誰でも自由に入れます)から続いている2つの公園を過ぎて、大きな道路まで走ります。

あっという間に30分が経っていました。

止まるときは右足の踵部分に付いたブレーキを使うのが本当なのだけれど、うまく使えないので、徐行しながら止まります。ターンができないので、直角にしか進めません。

それでも、すっかりインラインスケートに夢中です。
週末の朝、暑くなる前に一滑りするのが日課になっています。

Thursday, 5 July 2012

カナダの夏の楽しみかた


「明日は朝6時半には家をでるからね」

私の仮住まいの家主は退職者で、毎朝9時ごろに起きて、のんびりと朝の時間を楽しんでいます。そんな彼女が早朝、出掛けると言うのです。どんな大切な用事があるのかと思ったら、「髪をもう少しブロンドに染めようと思って」と涼しい顔。

そうなんです。
オタワの夏の朝はとても早いんです。
スパーマーケットや病院は8時から開いていますし、会社は7時から営業を開始するところもあります。
家主が20年に渡って通い続ける美容院も、7時から開くのです。

カナダにはサマータイムがあります。
毎年、3月の第2日曜日から、11月の第1日曜日までは、時計の針を1時間進めます。

2012年7月5日、今日のトロントの日の出は5時42分、日の入は21時01分です(MSN情報)。東京は、日の出は4時53分、日の入は19時11分です。

ほら。時間を1時間進める理由が分かるでしょ。
日本の時間を1時間早めると、6時から20時までの陽のある時間に、生活ができるのです。

カナダだと、例えば、朝7時から働き始めれば、15時には仕事が終わります。
日の入までの時間は6時間。
陽が高い間に、町の中を流れるリドー川に沿ってジョギングやサイクリングが楽しめるのです。自宅に戻って、庭でBBQを楽しんだり、子どもたちと遊んだりできるんです。

冬には雪が降り続き、気温はマイナス40度にもなるオタワに住む人びと。
夏の間に太陽の光を存分に浴びるのです。長い冬がやってくれば、外に出ることも少なくなりますからね。
オタワ市内を流れるリドー川。奥に見える三角の屋根は、国会議事堂です。

Thursday, 28 June 2012

猫パラダイス


猫の世話をするために、4日間、留守宅に泊まり込んでいます。

私の仮住まいの家主の弟と、そのパートナーが旅行に出掛けるため、猫の世話をしてくれる人を探していました。役目は餌をあげるだけ。さらに、ひとりで彼らの家を独占できるのだと聞き、まっさきに手を挙げたのが私。

私の仮住まいはオタワ市内の東にあります。そしてこの4日間の住まいは、西側に位置しています。

夜22時。
学校を終えてから、彼らの家に到着です。

まずは家の鍵を受け取り、少し傾いた玄関の戸を開けるコツを教わります。
「玄関を開けるときは、猫が飛び出さないように注意して」

そしてセキュリティーシステム。
留守中と就寝中の防犯のために、出掛ける前と寝る前にシステムを作動させます。システムが作動しているときに、一階のいずれかの窓か戸を開けた場合は、アラームが鳴ります。
「システムを設定するときは、(玄関のすぐ前にある)居間の扉は閉めておいて。猫が誤って飛び出すかもしれないから」
「朝起きたら、なによりも先にまずシステムを切って、サンルームと台所の窓を開けて。猫が行き来するから」

次に、二階を案内してくれます。
「ここがあなたの寝室。角にあるのは猫用の飲み水」
二階には4つの部屋があり、ユニットバスが2つあります。すべての部屋とトイレに猫用の飲み水が入ったボールが置かれ、これを満たすことも私の仕事です。
「トイレの蓋はいつも閉めておいて。猫がトイレの水を飲んだらいけないから」

次は地下。
「猫用トイレはここね。これは毎日、掃除して」

最後は居間と台所。
3匹の猫インキーとパディントン、スヌーズルは、それぞれ自分の餌場を持っています。
メモ用紙が差し出されました。たくさん言うから、書き留めておいて、と。

猫たちの食事は、朝晩の一日二回。
スヌーズルは痩せすぎているので、高カロリーのこの食事を出して。食が細いので、こうやって側で見ていて、励ましてあげて。それでも食べなかったら、他の「ふたり」と同じ食事を出してみて。
パディントンは肝臓を病んでいるので、この薬を猫カンの上に振りかけて。
インキーはたくさん食べるから、何度も食事を催促すると思うの。一食多くあげたからって体に毒なわけじゃないから、もう一回あげて。

猫カンは冷蔵庫にあるこれ。無くなったら、別の種類をあげてみて。味が違うからもしかしたら食べないかも。その場合は、捨てて、いつものやつをあげて。

餌場にはランチョンマットが敷かれ、その上にガラスのボールと陶器の器が置かれています。ガラスのボールは猫カン用で、陶器はドライタイプのキャットフード用。
「日によって食べたいものが違うみたい。まずは猫カンをあげてみて。食べなかったらドライタイプのキャットフードを用意してあげて」

日に何度か、「三人」が在宅しているか確認することも、忘れてはいけません。
「特に出掛ける前と帰ってきたときは、名前を呼んで確認して」

ふと気がつけば、時間はすでに深夜0時。
「言い忘れたことがあれば、明日、出発前に伝えるね。おやすみ。部屋の戸は少し開けておいてね。三人が夜、出入りするから」

シャワーを浴びて部屋に戻ると、パディントンが、開けっ放しにしたキャリーバッグに潜り込み、私の洋服の上で転がりながらその感触を楽しんでいるところでした。

「家が火事になろうと、ものが壊れようと、いっこうに構わないよ。猫たちさえ4日間、元気に過ごしていれば」
そう言い残して、翌朝ふたりは旅立って行きました。

後に残されたのは、大量のメモ書きと、読むつもりで持参した4冊の小説、自由気ままな3匹の猫たち、そして朝から大忙しの私。


Sunday, 24 June 2012

別荘な週末


友人の両親が所有する別荘で、週末を過ごしました。

なにやらとても贅沢なことをしたように聞こえますが、ここカナダでは、これが最もポピュラーな余暇の過ごしかたなのです。
その理由に、土地の値段が安いことが上げられます。

カナダの国土面積は世界二位を誇ります。日本の約26.4倍もの土地に、日本の約1/4の数の人びとが暮らしています。有り余った土地の値は安く、人里離れた別荘ならば300万円くらいから買えるようです。都市から車で1、2時間の、交通の便が良い場所ならば、1千500万から2千万円くらいが相場だと言われています。

そして気になるのが、別荘でなにをするのか、ということ。

オンタリオ州オタワ市とケベック州を結ぶフェリーに乗り、乳牛がのんびりひなたぼっこをする高原の間を抜け、何度か野生の鹿に出会いながら、車で走ること2時間半。湖畔に面した別荘地にやってきました。

6軒のこじんまりとした別荘が連なっていて、水着姿の老若男女が水の周りに椅子を配し、ビールを飲みながらくつろいでいるさまは、まさに日本の海水浴場です。違うのは、ここがプライベートビーチであること。6軒の別荘の所有者やその家族、そして私のように招かれた者以外は、この場に来ることはありません。
公園や川辺などの公共の場での飲酒が、法律で禁じられているカナダ。人びとはプライベートな場所で飲酒を楽しみます。

気温が30度にもなれば、気分はすっかり常夏です。
さっそく水着に着替えて、カヤックで湖に出ました。広い湖の真ん中を進みます。チャプンチャプン。自分の立てる音以外は聞こえません。何とも言えない開放感です。手を休めて、目を閉じました。カッと焼け付く太陽の熱と、湖の周りに生い茂った木々がざわめいて立てる風。目を開けると、ラッコが水面にピョコンと顔を出したところでした。

ランチは、カナダの夏の定番メニューであるBBQです。
日本の炭火のBBQとは違い、ここカナダではジャーマンソーセージやハンバーグを、屋外に置いたポータブル式のガス台で焼きます。これにサラダとパン。

ランチの後は、外でお昼寝タイムです。

そして、パントゥーンと呼ばれるレジャーボートに乗り込み、再び湖に出ました。
若者を熱狂させるチューブという遊びです。
ボートがひっぱる、穴の開いていない巨大な浮き輪「チューブ」に腹這いになり、振り落とされないようにしがみついているのです。ボートは波をたてて走り、ボートと紐でつながれたチューブは勢い良く横滑りになり、大きくジャンプしながら波に呑み込まれます。
チューブがコントロールを失うたびに、チューブから悲鳴が上がります。
チューブから人が振り落とされれば、ボートから歓声が上がります。

その後は読書をしたり、おしゃべりをしたり、アルコールを楽しんだり。

夕食前に、ジェットスキーでまたまた湖に。

夕食後は、キャンプファイヤーの周りに人びとが集まり、夜長のおしゃべりが続きます。

ここにはインターネットもなければ、電話もありません。
自然の中で思う存分遊びまくる。
これが別荘な週末です。