Thursday, 3 May 2012

魔法のピーナツバター



ここが仮住まいとは言え、住んでいれば私の家。

時間を見つけては、所持品を使いやすい位置に収納しています。マグカップは台所の棚にあるのが良いし、洗濯ネットは洗濯機の側がやはり使い勝手が良いものです。

そうやって、保管スペースを見つけるために、棚を開け閉めしていると、見ないで良いものまで目に入ってきます。錆び付いた缶詰や、置き去りにされた開封済みのスナック菓子など、これからも誰の手にも取ってもらえないものたちを処分していくと、自然と空間が生まれます。そこに、私の所持品を並べていきます。

埃を被った1リットルほどの容量の、細長い空き瓶を見つけました。蓋にはパッキンがついていて、お茶の保管にはもってこいの形状。洗って、さっそく持参した麦茶を入れてみると、ぴったりと収まります。それを、「コーヒー&紅茶」セクションの棚に並べてみると、これまたうまい具合に収まります。

たったひとつの問題は、瓶に一周ぐるりと貼り付いたラベル。瓶を洗ったときに、ラベルをヘタに剥がしたものだから、瓶に触れるたびに粘着テープがべたべたと手にまとわりつきます。ブラシで擦っても、ガムテープを貼付けて剥がしてみても、べたべたは取れません。

「ピーナツバターだよ」
どこからともなく現れた家主の声が、雲の上の神の声のように耳に入ります。家主は顔色も変えず繰り返します。
「ピーナツバターで擦ったら、一発だよ」

はて。「ピーナツバター」と聞こえたのは、私の英語力のせいでしょうか。

「日本でもピーナツバターは食べるの?」などと呑気なことを言いながら、家主が棚から取り出したのは、やっぱりピーナツバターの瓶。
うずら卵くらいの大きさ分のバターを、べたべたの上に擦り付けていきます。5cm四方に切った紙ナプキンで、くるくると円を描くようにさらに擦ります。

くるくるくるくる。

なんということでしょう。べたべたが、いとも簡単に消えていきます。黒板に書かれたチョークの文字を、黒板消しで消すかのように。最後にお湯で、「黒板に延びたチョークの粉」を洗い流せば、あら不思議。指で瓶に触ると、キュッキュと音まで聞こえるのです。

家主の家に代々伝わる「常識」だそうです。ピーナツバター、あっぱれ!

4 comments:

  1. ほー知らなかった!
    そんな時我が家ではベンジンを使いますが、ピーナツバターだとあの嫌な匂いがしなくていいかもね~。あ、でもピーナツバターは常備してないな…
    おばあちゃんならぬ、家主さんの知恵袋、ほんとあっぱれですな。

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    1. ピーナツバターは驚きの効果ですよ〜。家庭に伝わる知恵袋は、なかなか無視できませんね。

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  2. ほほ~それは知らなかったです。“日本にもおばあちゃんの知恵袋”とかありますよね。どこの国にもそういったモノがあるんですね~。昔の人(経験豊富)の言う事は、素直に聞くのもいいですね(^_-)-☆

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    1. 「ピーナツバター」っていうあたりが、北米っぽいですよね(笑)。

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