Sunday 6 May 2012

春の風


日中の気温が20度まで上がった土曜日、バスに乗って町まで出掛けました。

家からバス停までは、住宅街を10分ほど歩きます。この辺りの家々には、車道から玄関まで3mほどの前庭があり、花柄の絨毯のように青々と繁った草の間にタンポポが咲いています。全長50cmくらいの黒色のリスたちが、背中と尾っぽを「眼鏡橋」のように湾曲させて、道路や庭を駆け巡ります。庭のところどころに見える掘り起こした跡は、スカンクの仕業です。



バスの運転手も夏の装い。ショートパンツに半袖姿で運転をします。朝晩の気温が、霜が降りるほどの寒さであることが、本当に嘘のよう。

私が住むオーリーンズには高いビルが少なく、空がとても高く広く見えます。車窓から眺める空でさえ、青く澄んでいて、そしてはてしなく遠くに思えるのです。


あるバス停で、ちょっと滑稽な姿の男性が乗り込んできました。
年齢は65歳くらい。貫禄を表すかのようにあごひげを生やし、鼻の下にも髭を蓄えています。髪型は、漫画『サザエさん』に登場する波平さんのロングヘアー版。つるりと禿げ上がった頭の耳辺りから、白くなった長い髪が、肩胛骨あたりまでゆるやかに伸びています。耳には、直径10cmくらいの大きなリングのイヤリングをぶら下げています。背中には小花模様のリュックサック。揺れるハイビスカスのキーホルダーは、ブレスレットと色違いです。肉付きの良い体には、紺色と白のハイビスカス模様のノースリーブのワンピース。そこから伸びるのは、体毛がびっしり貼り付いた手足です。つり革を握る腕の付け根には、年季の入った脇毛がもっさり。ふくよかに盛り上がった胸元も見逃せません。丸眼鏡の奥には、まんまるのあどけない黒目があります。


彼は20代の女性と、5kgの米袋サイズの荷物3つと、連れ添ってバスに乗ってきました。荷物を床に下し、両手をつり革から、握り棒に持ち替えます。肩にかかる髪の毛をしきりに後ろへ払いながら。両手をまっすぐに握り棒に掛けて、体をバスの床から60度に傾けて、バスの揺れに合わせて左に右に体を動かします。あごをほんの少し上に向けたその姿は、まるでポールダンスをしているかのよう。窓から入る春の風が、ふわりと彼の髪の毛をなびかせます。


町に入ってすぐのバスターミナルで、彼と連れの女性がバスを降りました。重そうな荷物を3つたくましく持って、ワンピースの男は女性の前を歩いていきました。


オタワ市内はこの時期、チューリップ祭りで賑わいます。町のいたるところに植えられた多種多様のチューリップが、町を彩ります。
第二次世界大戦の最中、カナダに亡命していたオランダ女王が、戦後になって帰国し、10万株におよぶチューリップをオタワに贈り、市民に感謝を表したそうです。そのチューリップが毎年この時期にいっせいに満開になったことから、チューリップ祭りが開かれるようになったと言われています。


オタワ市民は、この祭りで春の訪れを感じます。私の仮住まいの裏庭でも、チューリップが花を開かせています。

2 comments:

  1. この季節は歩いて出掛けるにはいい気候だよね!カナダもお昼間は気持ちよさそうですな♪
    チューリップか~。かわいい✿ですよね。私も好きな✿の一つです。
    しかし、バスでの出来事を読んで、ぷぷっとニヤリしちゃいました。想像したらおもしろい!
    そこでの生活を楽しんでるな~なんて感じました。良かった♥
    そのうち、遊びに行きますね~。そのころは、地元っ子のようにその辺の地理も完璧にわかってるのだろうな~(^O^)/(期待)。あなたたちに会いに行くのが楽しみです♪

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    1. 今日のオタワは、日中7度。雨まで振って、寒いです。。。お花は、見ているだけで幸せよね〜。

      バスのおっさん、不思議よね〜。あまりにも良い天気だから、ノースリーブのワンピースを着ようと思ったのかしら?っぷっぷっぷ。

      ぜひ、遊びに来てね。それまでに、オタワのホットスポットや観光地をチェックしておきます!!

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